トリオ・アコースティックは1995年に結成された。当時、兄ゾルタンは22歳、弟ペーターは18歳で、結成時に在籍していた同じくロマのドラマーのエミル・イェリネクも18歳という若さだった。前作“Autumn Leaves"(95')はこの頃の作品である。以後、7枚のアルバムをハンガリーのPannon Jazzからリリースしてきた。その中には、同じくハンガリー・ロマ出身で、現在ドイツで活躍するサックス奏者トニー・ラカトシュとの録音"Caravan"(98')や日本の民謡をアレンジした"Sakura-Tribute to Japan-"などが含まれている。アルバムをリリースするごとに、地元ハンガリーでも一流のジャズトリオとして名を馳せるようになっていった。
アルバムに収録されている曲で5曲目の"Dzselem Dzselem"(「ジェレム・ジェレム」)はロマの国歌ともいわれるように有名な曲で、これをペーターの案でニューオリンズのリズムにアレンジしている。以前生演奏を聞かせてもらったが、アルバムではその2倍の速さで疾走している。その他、7曲目のMamoleはロシアの民謡で、ロマの歌手はよく歌っている。6/8のリズムで心地よいグルーヴが生まれ、新鮮だ。8曲目"Ai no Uta"はペーターのベースソロから生まれた曲で、私が歌詞をつけて歌っていることからタイトルは日本語になった。2曲目の"Lonely Moments"や4曲目の"Angel Voice"、6曲目の"When the Dreams Come True"などはまさにゾルタンの作風のバラードだ。3曲目の"Romano Vaker"は「ジプシーの会話」の意味。最後の"Kalo"は「黒」というロマニ語だ。