ヴォイス・フロム・ザ・フォーレスト-サムリ・ミッコネン・トリオ-
(GRSM001 税抜定価\2,190)
サムリ・ミッコネンのライヴをヘルシンキで見た。2001年3月15日、ヘルシンキ郊外にあるホールで行われたこの日のコンサートは、ヤリ・ぺルキオマキというシベリウス・アカデミーで教鞭もとるサックス奏者を中心としたプロジェクトで、ちょうどヤン・ガルバレクが行ってきたのと同様、ジャズと北欧の民族音楽の融合を試みるものだった。
楽屋で始めて、ミッコネンと体面した。彼は非常にシャイな性格で、集団の中で話すのはすごく苦手なようだった。携帯電話で話していても、愛想を振り撒くことなく、淡淡と低い声で必要なことだけを話して電話を切るようなタイプだ。それゆえ、二人で会って、話がはずむかどうか心配だったが、その後、改めて、ヘルシンキの中心街で待ち合わせをすることにした。
ミッコネンは身長180cmぐらいはある大男だが、なかなかのハンサムでもある。カフェに入って話しを始めると、この日は一対一で安心なのか、気さくに話をしてくれた。
ミッコネンは、ヘルシンキから北に300km行ったところのイヴァスキラという小さい街の出身らしく、母親が教会でオルガンを弾いていたり、従兄弟がプロのミュージシャンであったりと音楽的には恵まれた環境の中で育ったようだ。3歳からピアノを始めたという。彼の話ではヴァイオリンも相当弾けるようで、ポーランドにしろ、フィンランドにしろ、その幅の広さというか、底の深さに驚かされる。これはただ、楽器をいくつも弾きこなせるという意味だけではない。ミッコネンも「ボボ・ステンソンやヤン・ガルバレクが最も影響を受けたミュージシャンかな」と語りながら、一方で、もちろん、マイルスやコルトレーン、キース・ジャレットなどアメリカの大物ミュージシャンの名を挙げながら、シベリウスを非常に尊敬していると言っていた。交響曲のスコアを研究するほどだという。また、シベリウスもよく取り上げる民間伝承「カレワラ」を研究することもあるという。
彼が目指しているのは、アメリカ的なコマーシャリズムの音楽とは違う、音楽の探求であるという。「コム・ライヴ」のようなアルバムを出す一方で、最初に挙げたようなプロジェクトにも積極的に参加。フィンランド人らしい音楽を作り出そうという前向きな姿勢と情熱が、彼の淡淡とした話しっぷりの中から感じられた。ピアノ・トリオとしては、彼のファースト・アルバムである本作品は、「コム・ライヴ」よりもよりフィンランド的作品だと語っていた。ジャケットの写真も自分で撮ったらしい。
暇をみて今でも、故郷に戻ることがあるらしく、ヘルシンキは音楽活動のための拠点だと割り切っていると語っていた。自然とともに生きることを大切にするフィンランド人、サムリ・ミッコネンの心象風景が綴られた、美しい音楽作品の登場である。
(曲目)
1.果てしなく続く空間
2.古城
3.終わりある命
4.秋
5.荒れ狂う風の中で
6.ヴァイキング
7.辿り着いたロシアの街で
8.森の隠れ家にて
9.雲
10.しぶきをあげる海
1998年9月録音
クロッシング・アトラス45°-インターゾーン・トリオ-
(GRNT719 税抜定価\2,190)
「ハバネラ」を出した同レーベル、ポーランドNOT TWOから発売された新作。 最初、このインターゾーン・トリオが、ポーランドが誇るテナーマン、アダム・ピエロンチクと ともに制作したアルバム「インターゾーン」(MW716−2)がガッツプロに届けられた。この時初めて 耳にしたのが、ミルセア・ティベリアンというピアニストの美しいピアノだった。アルバムの解説を 読むと、このピアニストは、ルーマニア出身、そして彼を盛り立てるベーシストとドラマーは ドイツ人であるらしい。ピエロンチクの説得力ある、力強いサックスが、不思議とこのピアノ・ トリオの静かな雰囲気にマッチしている。これはこれでオススメである。
しかし、このせっかくのピアノ・トリオをそのままで聴いてみたい。そう正直にNOT TWOの ディレクター、ヴィニャルスキ氏に言うと、「実は、それだけの録音もとってあるんだ。 でも、ポーランドでは売れそうにないから、そのままになっているんだ」という返事。 こんな素晴らしい演奏が出来るトリオをそのまま寝かしておいてはいけませんよ! こういうやりとりの中で急遽リリースが決まったのが、このアルバムである。
「クロッシング・アトラス45°」といういかにもジャズらしくないタイトルは、 すでにPCM放送出演の折に物議を醸し出していたが、なぜ北緯45°なのか、 実際アルバムを手にされた折に解説を読んで頂きたい。ピアノ・トリオという形態で、 ヨーロッパ人の心情が見事に描き出されている。難しい話はさておき、まず聴いて頂きたいのが、 1曲目「思い出」の1分50秒を過ぎたあたりから表れる美しいメロディー。「前半部分の混沌とした中から、 立ち上る一条の光」というと、あまりに大袈裟だが、しかし、この落ち着いたほっとさせるメロディーは 誰もが否定できない金字塔だ。そこまで胸を張ってこの曲のよさを伝えたい。5曲目「別れの曲」 でも同じ美しさの中に気持ちを委ねることができる。そうかと思えば、ルーマニア民謡を素材にした という8曲目「ハツェガナ」やエキゾティックなムード溢れる7曲目「アルメニアの祈り」など、 民族音楽をジャズとして見事に消化してしまっているところは、今のヨーロッパのピアノ・トリオらしいアプローチだ。
(曲目)
1. 思い出
2. 長距離電話
3. クロッシング・アトラス45°
(北緯45°を旅して)
4. カインド・オブ・ゼベヒコス
5. 別れの曲
6. アフロワラッハ
7. アルメニアの祈り
8. ハツェガナ
9. 冬のイタリア
1998年9月録音
他にも注目のヨーロピアン・ピアノ・トリオ・シリーズ
サムリ・ミッコネン・トリオ/コム・ライヴ(GRSM002)
税抜価格2,190円
朝日新聞社asahi.com
『サニーサイドジャズカフェ』
にも掲載中!!
ナタリー・ロリエ・トリオ/サイレント・スプリング(GRPY001)
税込価格2,500円
ジャン・ピエール・コモ・トリオ/父に捧ぐ(GRPY002)
税込価格2,500円
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