Liner Notes アルバム詳細情報
ナイポンク・トリオ『ニューヨークの秋』 ナイポンク・トリオ  『ニューヨークの秋』 このCDを購入する
GPTS706 \2,300(税込価格) チェコ
輸入盤でご好評を頂いた、ナイポンク・トリオの傑作、「ニューヨークの秋」が、ディジパック・国内盤仕様で再リリース。洗練されたアメリカン・スタイルの語り口と、チェコのピアニストならではの、ビロード・タッチのロマンス感覚の語り口を見事に使い分けるナイポンク。このアルバムでは、それに加えて、2つの味を配合させて、新味を生み出している意欲作でもあります。

■曲目
1. ミスター・ビューティフル Mr. Beautiful
2. バック・アット・ザ・チキン・シャック Back At THe Chicken Shack
3. イフ・アイ・フェル If I Fell
4. ドリーミング Dreaming
5. ドリーム・フォー・トゥー Dream For Two
6. ナイン・イレヴン 2001 Nine Eleven 2001
7. ハーレム・ワルツ Harlem Waltz
8. ニューヨークの秋 Autumn in New York
9. ガール・オブ・マイ・ドリームズ Girl Of My Dreams
10. イン・ザ・グルーヴ In The Groove
11. 5月21日の思い出 I'll Remember 21st May
■メンバー
ナイポンク Najponk(p)
ペーター ”ミスターPD” ドヴォルスキ Petr “Mr PD” dvorsky(b)
マルティン・スルク  Martin Sulc(ds)

■録音
2002年8月22日プラハにてスタジオ録音
■解説
 この『ニューヨークの秋』は、チェコで人気の高い若手ピアニストのナイポンク(1972年生まれ)の2作目のトリオ・アルバムです。初作は2005年に日本盤になった『ブルース・バラード・アンド・モア』(GPTS024)で、グルーヴィー&ファンキーな演奏に徹したアルバムでした。この『ニューヨークの秋』では、別の魅力が加味されています。

 『ブルース・バラード・アンド・モア』の後、ナイポンクはソロ・ピアノ・アルバムを2作発表し、洗練されたアメリカン・スタイルだけではなく、新しい聴き所をアピールしています。まず『Going It Alone』(MJCD2112/1999年)では、欧州的リリシズムを香らせパッショネートな高潮もみせる自作の「アンナ」が光っています。ソロ第2作『Just About Love』(MJCD9906/2000年)ではその魅力は自作の「2人のための夢」で光り、さらに自作「5月21日の思い出を胸に」では憂愁の趣きを強めた表現で心を火照らせてくれました。

 ナイポンクの欧州風情の抒情・ロマンスの醸し出し方は抑制がきいています。執拗な口説きやドラマティックな高揚といった演出に過剰な依存をすることなく、エレガントな風情を保持しています。この性質は、ナイポンク1人に限らず、大ベテランのカレル・ルージツカやエミール・ヴィクリツキーから最近の他の若手の演奏にまで、チェコ・ピアニストの傾向としてしばしば感じられるもので、チェコ性とみていいのではないかなと私は考え、ビロード革命(1989年)にちなんで、ビロード・タッチのロマンス感覚と呼んでいます。

 洗練されたアメリカン・スタイルの語り口と、ビロード・タッチのロマンス感覚の語り口を上手に切り替えることができるのがナイポンクです。それに加えて、2つの味を配合させて新味を生み出しているのが、このトリオ編成による『ニューヨークの秋』です。1曲目「ミスター・ビューティフル」(自作)はまさにその新味が香ばしいトラックで、いわばビロード流モダンジャズ・ピアノ・スタイルの総括と言うべき痛快かつ爽快な演奏。ブラボーです。一転してファンキー節の2曲目(ジミー・スミス作)。3曲目(ジョン・レノン作)は物憂気なバラード。白日夢のような4曲目をヴァース代わりにして5曲目でソロ作で印象的だった「2人のための夢」でビロード・タッチ・ロマンスへ回帰。6曲目「2001年9月11日」(ジャケットにこの日破壊された貿易センタービルが写ったニューヨークの写真を配しています)は、オールド・スタイルでブルージーなフレーズを歌い上げたのち、聖歌か賛美歌めいた旋律で清楚かつ謹厳に締めています。ジャズ的レクイエムといったところでしょうか。7曲目はリリカル・ワルツ。心静かに散策するような8曲目「ニューヨークの秋」。9曲目は純正ハードバップ調、10曲目はファンキー&グルーヴィー節。締めは憂愁美旋律曲「5月21日の思い出を胸に」の再演です。感動的です。ナイポンクはこのアルバムをニューヨーク市民に捧げました。

岡島豊樹(東欧?スラヴ音楽リサーチセンター所長/『ジャズブラート』誌編集長
お問い合わせは、okajima@mail.raidway.ne.jp まで)



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